2011年7月定期掲載 「当院の節電に関すること、そして、OA機器」
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節電と私たちの使命
昨今の電力不足により、節電が叫ばれています。特に、7月~9月の、ピーク時間(9時~20時)では、電力不足で全体停電の可能性があるのではないかと聞きます。そのような中、当院も、節電に努力しているのですが、なかなか思うようには成りません。そこで、世の中の病院は、どのように節電しているのかを調べているときに、資源エネルギー庁の資料でこういうのを見つけました。
●医療機関における用途別電力消費比率
空調38% ・ 照明37% ・ OA機器4% ・ エレベータ4% ・ その他16%
(資源エネルギー庁「平均的な医療機関における用途別電力消費比率(ピーク時14時前後)」より)
つまり、私たちの病院でも、空調や照明の節電が効果的であろうことが解ったのですが、では、そのまま効率の良い部分の節電をするとどうなるか。
(LED照明とか太陽光発電とか代替手段は今すぐにはできないので節電項目から除きます…)
★ 空調が付いてない、むしむし蒸すフロアでの「リハビリ」
★ 太陽光のみで、うすぐらいフロアでの「リハビリ」
・・・たぶん、こうなってしまいます…。私たちの使命は、医療的技術力(人的資源)と充実した施設(環境資源)で、患者さんに一日も早く、安心してご自宅に帰れるように支援することであり、こんなことになってしまうのでは、私たち「新横浜リハビリテーション病院」は、自らの手でこの使命を否定することになってしまいます。とはいえど、節電しなければ、今年の非常事態は乗り切れません。この難しい問題を、まずは私たちにもできることから取り組むこととしました。
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私たちにもできる節電とは
私たちの病院は、開院当初から、医療の質の向上のため、カルテは電子化されています。つまり、パソコンがいっぱいあります。まずは、この部分に注目しました。
<HIS系>
(a).モニタの電源を1分で自動消灯
(b).パソコン内の未使用パーツに通電をさせない
(c).無駄な自動印刷をできるだけ削減する(=プリンタ稼動時間削減)
<非HIS系>
(d).パソコン省電力化ソフトの導入
(e).印刷内容節約ソフトの導入(=プリンタ稼動時間削減)
(f).PDF作成ソフトの導入(=プリンタ稼動時間削減)
※HISとはHospital Information Systemの略で、病院内の情報を電子的に管理するシステムのことです。電子カルテ、オーダリング、医事システムなどの総称。
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HIS系の節電
(a).モニタの電源を1分で自動消灯
パソコンには節電できる項目として、休止状態、スタンバイ、ハードディスクの電源を切る、モニタの電源を切る、この4つの設定ができます。電子カルテは常に情報のやりとりを大きなコンピュータとしていますので、休止、スタンバイ、ハードディスクについてはリスクがありますが、モニタだけならばシステムに影響を与えることはありません。これを数百台に設定すれば、節電できると考えました。
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(b).パソコン内の未使用パーツに通電させない
使わないパーツ(例えばCDドライブなど)に通電をさせなければ、それだけ消費電力が下がります。元々、院内規定でも、使用が禁止されているものですので、全く使用しておりません。これを数百台設定すれば、節電できると考えました。
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(c).無駄な自動印刷をできるだけ削減する
当院のレーザプリンタは、印刷時に400W程度、待機に50W程度、スリープモードに6W程度消費するとのこと。当院には数十台ありますので、印刷を減らせば節電できると考えました。
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非HIS系の節電
非HIS系とは、上にある「私たちにもできる節電とは」の注釈「※」以外のもの、つまり、電子カルテ、オーダリング、医事システムなどの系統以外で使用するパソコンのことを指します。院内では「事務用パソコン」と呼んでいます。
(d).パソコン省電力化ソフトの導入
OS標準の省電力設定を最適化して消費電力削減するソフトを導入することで節電できると考えました。試用したところ、この節電ソフトはとてもよくできていたため、ソフト制作会社に問合せしたところ、商用利用の許可をいただくことができました。
(e).印刷内容節約ソフトの導入
上にある「(3).(c). 無駄な自動印刷を~」と同じ目的です。このソフトは、4枚を1枚印刷したり、印刷したくないページをカットしたりするものです。当院には非HIS系のプリンタもたくさんあります。
(f).PDF作成ソフトの導入
上にある「(3).(c). 無駄な自動印刷を~」と同じ目的です。配布する紙を、デジタルデータ(PDF)で配布(送る)ことで、印刷を減らせるのではないかと考えました。
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その他(パソコン系以外)の節電
その他(パソコン系以外)の節電についても当院では努力しておりますが、詳細については割愛させていただきます・・・(今回のこのブログ/コラムは、私こと、コンピュータ部門が執筆担当のため)
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おわりに
この第1回のブログ/コラムでクローズアップしました節電は、冒頭にある「●医療機関における用途別電力消費比率」の「OA機器4%」の中での話です。とても微々たるものかもしれません。しかし、小さなことの積み重ねをしないと、昨今のエネルギー問題を乗り切れません。元々、電気の無駄使いなどしていないところからの節電ですから、今までと同じことを続けようとしていたのでは、節電になりません。価値観を変える必要があると思います。
大昔は空調などありませんでした。祖父が、手ぬぐいを肩にかけ、庭に打ち水をし、うちわで扇ぎながら、あついのぉ、と、言っていたのを思い出します。また、照明についても昔は最小限だったことを思い出します。私の祖父の家は、母屋とトイレは別棟になっていて、夜中の小便は、それはそれは恐怖でした。母屋を出て、外にあるトイレに向かえど、暗闇ゆえ、外にあるトイレの電灯のスイッチがなかなか見つけられず、ええぃ面倒だ、と、月の光を頼りに、小便器に向かうも、便器に向かった瞬間、無防備な自分から沸いてくる言い知れぬ恐怖との戦いがありました。35年ぐらい前の話です。(その後は、小さい子供ながら計画性を持って順応することに…)
このような大昔の風情には戻れないかもしれません。しかし、つい最近まで当たり前のように使えた電気はもう過去のことだと思います。今、私達にできることは、電気のありがたさを再認識し、電気を大切に使ってゆくことが必要だと思います。私は、電気の使用(パソコンの使用)を推奨する立場(医療情報技師)ですが、相反する「節電」について、今後も取り組んでゆきたいと思います。
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執筆 2011年6月27日 新横浜リハビリテーション病院 医療情報システム室 玉置隆人
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